灰原千景は―――

まあ正確に名前を知ったのは今日だけど。ん、もしバスケを見に行かなければこのままずっと知らないままだったのか。それはそれで良かったのかも。


とにかく、初めて出会ったのは二年に進級した春。

いつものように、放課後の図書室で本を読んでいたあたしの前に、ドカッと置かれた足。長いだろ、という自慢ならお門違いだと、あたしは顔を上げた。椅子に持たれ掛かったまま、足をテーブルの上に投げ出していたのは、マナー云々の問題じゃない。あたしはまれにする不機嫌最高潮の顔で睨んだ。