ただ見ているだけでは何も見えない…。ヤンクスは確か、石版をどう捕えるかといっていたな…。



一発、全力を込めて緋焔を振るう。石を叩く金属音が響き、手には痺れる痛感が腕に抜ける。


頑丈さに折れぬこの剣が、並の素材で造られていないのを体験できた。だが、その剣を用いても砕けぬとなると、やはり捕らえ方…。

見方…、神経から感じる一点…。それを探せととってみるか。



目を閉じ、精神を今ある極限まで高める。身体中に感じる、石版の力…。施された術が集う核たる源。

黒い景色は嘘のように一点を輝かせ、周りを諭し、眼を開かず、無我でそこに緋焔を振り下ろした。



―――バキーッン―――


それは砕けたのではなく、そこを斬っただけで朽ちたと言える。あんな弱い一撃で、裂けるとは思いもしなかったが、現に割れているのだ。


「そういうことか…」




例え強靭な身体を持つ相手でも、急所の一点に力を集めれば倒せる。それを為す術を得るものが、これから先に必要なのだな…。

やはり…、まだまだ俺は弱い。学ぶ術がいくらでもあるというわけか。



もっと…、自分の力に近付きたいな…