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一週間が過ぎた。セミがジリジリと鳴きだし、気温は連日35度を越した。退屈だった。図書館から小説を何冊か借りてきたが、それも読み終わり、完全に時間を持て余した。

唯一やることといえば、5時過ぎに茂と仁士が住む団地に行き、だべることくらいだった。

僕は自転車(本当は原付が欲しいが、親が許してくれなかった)をこぎ団地に向かった。蛾がたかっている階段の蛍光灯の下で僕たちは会話をした。

「どうよ、調子は?」
僕は茂と仁士に訊いた。
「学校から解放されたかと思うと、今度は塾だ。いやんなる」
仁士がいった。

茂が僕をつついた。
「お前は?」
「やることがなくてな。うだうだしてるよ」
「そっかあ。でもちょっと羨ましいよ」
仁士はそう言った。
「何が?」
と僕。
「学校行きゃ、授業はつまんねーし、休みになりゃ親があれこれうるさい。『宿題はやったか? 大学はどこうけるんだ?
休みだからって堕落するなよ。こういう時にしっかり勉強するのがあとあと後悔しないやり方だ』こればっかり」

「嫌になるな」
僕は言った。
「ところで聞いたか?相川(アイカワ)と正之(マサユキ)がつきあったらしいぜ」
茂はそういうと、階段脇に植えられた朝顔の葉をちぎった。

「マジ?」
仁士が目を見開いた。
「ああ。マジ」
「女か、おれ達は誰が一番先につくるかな」僕は言った。

「おれ達、女っ気ないもんな」
仁士が言うと、
「うん」と僕と茂が声をハモらせた。