宿泊研修からしばらく経った夏の始まりの日。夜に窓を開けて涼んでいたらお母さんが部屋に入ってきた。
「ゆめー、啓太くんからメール来てるよ」
「あー、んー」
一時たくさんメールしてたけど、最近は全然してなかった。何度も送ろうと思ったけど、本文が思いつかない。
用がないのにメールをすることができなくなった。用があることも滅多にないし、ただ毎日送るか送らないか葛藤してるだけだった。
お母さんには何気ない風に返事したけど、かなり心の中は混乱してる。お母さんの顔も見ずにケータイを受け取った。
ぎゅっと目を瞑り深呼吸する。恐る恐るメールを開くと、そこには啓太からのいつも通りの文章が。
『なにしてる?』
啓太がヒマな時に送られてくる見飽きたメール。それが今日はとても嬉しい。
『涼んでたよー!たいして暑くもないけど(笑)』
『意味分からん(笑)』
『虫の音がめっちゃうるさいよ!そういえば今日さ……』
あたしが啓太を好きだなんて絶対に知られなくない。望みがないなら、気づかれないうちにこの恋を終わらせてしまいたかった。