「あたし、ちょっと前に失恋したばっかりやねん。その……自分のこと、隠して付き合ってた人に思いきってカミングアウトしてんけど……。結局振られてしまってん。それで、めちゃくちゃ落ち込んでて……。あの夜、マヒロ君、一晩中、あたしの愚痴につきあってくれてた」


「え……そうだったの?」


「うん。マヒロ君、あたしの体のこととか、一生懸命慰めてくれて……。『どう見ても女の子にしか見えないから自信持て』とか『めっちゃ可愛い』とか、あたしが嬉しくなるようなことばっかり言ってくれてんよ」


うっ……。

オレ、そんな調子の良い言葉ばっか並べてたのか。

で、結局どうだったんだよ、オレ達?

びくつきながらも確信に触れようか触れまいか、迷っているオレに、リアナは小声で耳打ちする。


「『抱きたい……』って言ってくれたし」


言っちゃったか。

言っちゃいましたか……オレ。


「マジでぇ……?」


顔を覆ってうなだれた。

酒が入っていたとはいえ、言い逃れはできねぇよなぁ……。

やべぇ……。

どうすんの、オレ。


月明かりのせいだけじゃない。

きっと今、オレ、顔面蒼白になっていると思う。


「プッ……」


ふいにリアナが吹き出してクスクス笑い始めた。