サキは目をまん丸にしてオレを見上げる。

その時オレは気づいた。

もう、雨の音がしなくなっていることに。


「ああっ。もう、これ邪魔っ」


片手しか空いていないことがもどかしくなったオレは、パッと傘を放り投げると、両手でサキを抱きしめる。


片方の腕をサキの腰に回してさらに彼女を引き寄せた。

これまでも彼女を抱きしめたことはあったけど、ここまで体が密着したのは初めてで、不覚にも心臓が飛び出しそうなぐらいドキドキした。

サキの髪からシャンプーの香りがする。

女なんて何人も抱いてきたのに、その誰とも全然違った。

腕の中にいる彼女の体は想像していた以上に華奢で折れてしまうんじゃないかって思うほどだった。

それでも腕の力を緩める気はさらさらなかった。


「いい加減気づけよ……自分の気持ちに。それと……オレの気持ちにも……」


「マヒロさん……?」


オレはさらにサキの体をギュっと抱きしめた。

そうでもしなきゃ、今から言おうとしている言葉が口から出てきてくれないような気がした。

まるで生まれて初めて告白するガキみたいにドキドキする。





「すげぇ……好き」