美しかった。
息をするのも雪が降っていることも忘れるほど目を、心を奪われた。
公園の入り口のガードレールに座り
空を見つめる一人の青年。
漆黒の髪、黒のモッズコート、
黒のスキニーパンツ、
黒のショートブーツ、黒の手袋。
唯一の白は透き通る肌。
そして何より......
すべてを吸い込みそうな
漆黒の瞳。
見ている先は私ではない。
私など目に入っても居ないだろう。
でも、私は立ち去ることは愚か目を逸らすことすら出来ない。
純白に埋もれることの無い
黒色の青年。
ざわつく胸。
見てほしい、見られたくない。
掻き乱されてく感情。
もう空っぽになったはずの
私の世界はこの日を境に
新たに動き出した。