本当に恥ずかしい。
勘違いも甚だしい。
いっそ清々しい。
「そっか...。
そうだったのね。」
もうそれしか言えない。
そんな私にえみりちゃんに代わって
物凄くニコニコした那都君が
言葉を続ける。
「おねーさんが走っていった日、
俺もいました。
アトリエで玄斗にシルバーアクセの
作り方を教えてもらっていたんです。
で、インターホンに玄斗と俺は気づかなくて。」
この子もあの日いたんだ....。
二人きりじゃなかった。
その事実1つで
かに残っていた刺が
溶けていくのが分かる。
「それで、えみり先輩が出てくれたんですけど。」
「おねーさん帰っちゃった。」
「....くろ...。」
おとなしく私たちの会話を聞いていた
くろが口を尖らせた。
本当に周りが見えてなかったんだな
とくろの哀しそうな顔をみて
改めて反省する。
いつだってくろにこんな顔をさせたくはないのに。
私にもう少し勇気があれば、
こんなことにはなってなかったはずだ。
自分に自信がなかった。
まだ会って間もない年下の男の子の家に通う自分を、自分が認めていなかった。
そんな非日常的なこと、
夢を見てるんだってどこかで
いつも考えてた。
どこかでいつでも逃げれる
言い訳を作ってるだけだった。
それが見えない大きな壁となり、
本当についには見える壁となって
私の前に現れた。
壁を作ったことで
本当のことは見辛くなって、
言い訳して楽になれるはずの
私の心は余計に重くなった。
諦められないような存在なら、
最初から逃げなければよかったのに。
くろはずっと私の前にいてくれたのに。
まっすぐに私だけを
見つめるくろに胸が締め付けられる。
泣きそうな瞳に心がすべて持ってかれる。
私は同じ失敗を繰り返そうとしていた。
嘘をついて過ごしたって何も良いことなんて無いのに。
もう既に発生してしまった気持ちは
隠せないのに、嘘は終わりを迎えるのに。
わかっていた、はずなのに。
こんなに、くろが好きなのに。
傷つくのが怖くて逃げた。
自ら手離した。
もうサヨナラを聴きたくなかった。
でも、私のしていたことは
結局「サヨナラ」したと同じことだった。
傷付きたくないから、
傷つけた。
「......ごめんなさい。」
自然と言葉が漏れた。