くろの大切なお日様は
女の子ではなく男の子で、
弟だった。
考えてみれば
くろは女の子だなんて
一言も発していなかったし、
本当に一人勝手に女の子だと
思い込んでいたのだった。
そして、えみりちゃんの声を聞いて
勝手にショックをうけた。
あぁ、やっぱりくろの大事な子は
くろの近くにいたと勝手に傷ついて、
逃げて、勝手に嫉妬して。
えみりちゃんを傷付けた。
大人の癖に、いや、大人だから
理屈ばっかりたてて、自分を守って
私の方が凄く年下の可愛い女の子を、
悩ませて傷つけていた。
「あのー.....。」
そうして私が声を出そうと考えている
一瞬先にまたしても遠慮がちな愛らしい声。
このままここで出遅れては
大人失格。いや、最早人間失格だ。
大体考えたってえみりちゃんに
私ができることは一つしかない。
謝罪。
一刻も早い謝罪。
何かを喋ろうとしている彼女を手で制して立ち上がり深々と頭を下げる。
頭上で驚く声が聞こえた。
「ごめんなさいっ
私が、勝手に勘違いした。
私が、勝手に逃げたの。
えみりちゃんは、何も悪くない。
本気で悪くない。
.....優しい子だね。
私にはあなたがお日様にみえた。
そして、本当にお日様みたいにイイコだから、
心底自分が恥ずかしくなった。
ごめんなさい。
ただの八つ当たりと一緒。最低なの。
こんなおばさん相手に真剣に向き合ってくれたのに。
私が謝るべきなのに、先にあなたから声を発しさせてしまって、本当に、ごめんなさい。」
一気に捲し立てるように
けれど伝わるように。
私の謝罪は高校生の女の子がした
謝罪よりも、稚拙に感じた。
「そんなっ。
本当に、私はそんなこと微塵も気にはしていません。
おねーさんが勘違いするのだって、
当たり前です。
だから、頭をどうかあげてください。」
余裕の無い私に比べて
語調も私の肩にそっと手を置く仕草も優しい。
本当に私の失態など歯牙にもかけていないようだった。
情けないなぁ。
恐る恐る顔をあげると
少し照れてるように笑うえみりちゃんがいた。
「あの、私はこの子の、那都君の彼女....です。」
「えみり先輩...!!!!!!!(感激)」
那都君がえみりちゃんの手を
勢いよくにぎった。
「あの日、私がここにいたのは
一年記念の指輪を.....作りにきていたからです。」
はにかみながら目を合わせて
「ね。」と微笑みあう二人は
どこからみても
幸せそうなカップルだった。