中に入っていたのは
一つ一つビニール袋に包装された、
「シルバーアクセサリー、です。」
くろがその中でも一際目立つ蛇のモチーフの指輪を袋から取り出すと、
私の中指に差し込んだ。
中指に鎮座したそいつと対峙する。
蛇の目はオニキスが嵌め込まれているらしく、鈍く光っていて吸い込まれそうなほど魅力的だ。
指に絡み付くように巻かれた3周のとぐろの絶妙なバランスは
見事としか言いようがない。
普段シルバーアクセサリーをつけない私でも、これが「凄い」と分かる指輪だった。
「気に入った?」
素直に頷く。
「サシアゲルヨ?」
とんでもない発言。
一瞬言葉を失いかけるもここは流されてはいけないと思い
必死に言葉を放つ。
「え....。ダメ!こんな。
絶対高いし、凄いものでしょう?」
「うーん。
まだ値段つけてないから、大丈夫。」
「何が?!」
「それに」
「っ。」
「おねーさんに、これはあげたい。」
何にも汚れてないような瞳が私を射抜く。
心臓がどくんと大きく鳴るのを感じた。
「良いの?」
「良い。」
言い切るくろに私は負けた。
「わかった。
.....大事にする。
本当にありがとう。」
ここに、つれてきてくれて。
指輪までくれて。
温かい気持ちをくれて。
ありがとう。
「うん。
じゃあ、裏に名前掘る。」
「......gen?」
「あー。
そうだね。僕の名前はgenだよ。」
「gen...。」
「でも、おねーさんにはkuroにする。
特別....ね。」
「とくべつ....。」
「うん。」
機嫌良さそうに微笑むくろが
あながち間違ってないし、と呟いた本当の理由を知るのはもう少し後のこと。