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父は普通のサラリーマンだった。
毎朝、灰色のスーツにネクタイを締めて家を出て行く。
父のネクタイはえんじ色とクリーム色のストライプのものか紺色に白い水玉模様のものが一番多かった。
大きな艶つやした革靴を履き、手首には黒い円盤に銀色の針の腕時計をして、薬指には細いシルバーリング。
軽やかにカットされた髪の毛は、毎朝整髪料によってセットされている。
白い肌に彫りの深い目元。長いまつげに高い鼻。父からはいつも甘い香りがした。



母は専業主婦で、背中まで伸ばした髪の毛は赤みのかかった茶色をして、ふんわりとしたやわらかいウェーブがかかっていた。


母はいつもぴんくのギンガムチェックに赤いリボンと白いレースのついたエプロンをしていて、長い髪の毛はきらきらしたラインストーンの花と蝶がついた髪留めで結われていた。


母は丸い顔立ちをしている。丸く大きな目。丸く小さな鼻。丸いほっぺた。桜色の唇。母からもいつも甘い香りがした。



父は日曜日は必ず定休で、土曜日は仕事に行く時もあればそうでない時もあって、その規則性は定まっておらず休みは不定期だった。
しかし、日曜日に父がスーツを着て出て行くことはない。
日曜日、父は大抵家にはいなかった。
平日は朝、父が仕事に行く時間に父に連れられて家を出ていた。