「青ちゃんは、絵が上手なのね。」



驚いて顔を上げると、
茶色の大きな瞳が青をじっと見ていた。


青の身体が硬直する。
にっこり笑ったその人は、新しく赴任してきた幼稚園の先生だった。
驚いたような警戒したような眼をして、歯を食いしばっている青に、先生は優しく目尻を下げて、頭を撫でようとした。



「――――っ!!!」


「きゃあっ」



そんな先生を突き飛ばし、青は馬乗りになると胸ぐらを掴み、言葉にもならないような奇声を発しながら、先生の顔を伸びきった鋭い爪で引っ掻き、まだ小さい手で殴りつけた。



「青ちゃん!!!」



騒ぎを聞きつけた他の先生が慌てて止めに入る。
荒く息をし、全身の毛を逆立てたような青はまるで威嚇した猫だ。
他の先生に羽交い締めするようにされても暴れ、こうなったら手に負えなかった。



「橋本先生、大丈夫?」



青に引っ掻かれ、赤く傷になった頬を撫でながら橋本先生は体を起こした。



「あの子はいったい……」


「もうああなったら手に負えないの。どこかに閉じ込めておくしか手はないわ。」


「閉じ込める!?そんなひどい!!!」


「そうでもしないと落ち着いてくれないのよ。他人が触れようとすると、ああやって酷い癇癪を起こして、暴力を奮う。私たちがいくら宥めようとしても無駄。かえって興奮させてしまうだけなの。何時間でもあの子は暴れ続けるわ。人間がそばにいる限りね。」


「そんな……」