それから数日後。


ケンとカンナが検診に行っている間、キヨが1人で家のリビングでテレビを観ていると、インターホンが鳴った。




「はーい」



キヨが玄関のドアを開けると、そこにはイノリが立っていた。




何も聞かなくてもわかる。

イノリがそこにいる意味が……




「何で泣いてんだよ。人の顔見て泣くな、バカ」



知らぬ間に涙を流していたキヨ。


そんなキヨを見て笑うとイノリは呟いた。




「…ただいま。キヨ」




涙で破顔するキヨを優しく抱きしめるイノリ。



キヨも自分の元に戻ってきた存在を、もう何処にも行ってしまわないように強く抱きしめた。




「おかえりっ…おかえりなさい」

「ただいま。待たせてごめんな。もう何処にも行かねぇから」



玄関には優しい風が吹き抜けた。


キヨの元にイノリが戻ってきた事を祝福しているかのように。






2人はケンとカンナが帰って来るまで、玄関の前で抱きしめ合っていた。









それから数ヶ月後。

カンナはカゼによく似た男の子を産んだ。