「水凪の国」
1.旅立ち

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いつもと同じ、いやな声で目が覚める。

「またかよ」

うんざりした口調でつぶやくと、少年は薄い麻の毛布を顔までかぶる。

外はもう薄暗い。

まだ、夕焼けの名残を残した空が四角い窓に切り取られた鈍い赤を、アクアはまぶたの裏に反芻しながら、丸くなる。

「いるんだろ!」

ああ、バカだ。
バカ、その一。
でかいだけで、脳みそなくて、ちりちりした短い腐った色の髪の。

「お前、また学校さぼっただろ」

バカその二。

「おい、アクアぁ!出てこいよ」

バカその三。

二も三も、たいして違いはない。
どっちもバカ一の子分。

ついていくだけの、真似してるだけの。



ああ、明日になればカタロが帰ってくるって言うのに、ほんとにうるさいよな。

カタロがいる時には近寄りもしないくせに。

知ってるのかな、明日になると、俺を苛められないって。

だから、こんな時間まで、しつこくするのかな。

そうだな、バカその一の親父さんも、カタロと同じ水守(みずもり)だ。

勤務が一緒なら分かるよな。


ドン、と、玄関の木の扉が開けられる。


アクアは飛び起きた。

「お前ら、カタロがいないからって、好き勝手するなよ!」


そう怒鳴って、駆け出す。

小さな石造りの家は、部屋が二つ。
アクアが寝ていた寝室と、小さなかまどのある大切な水のある部屋。

三人のバカはバカだから、大切な水がめを壊すかもしれない。

それだけは、ダメだ。

止めなきゃ。


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