「蒼い星」
1.その男
9.再会
Line2

「私、ね。あの町で、多分レクトを見かけたの」

ミンクが、ぽつりと言った。
シキと二人で、共有のリビングで食事をしていた。
二人とも、半分以上残している。味気ない食事。

「早くいえよ!いつだよ」
「商業区の、市場の人ごみで。多分、そうだと思うの。すぐに奥の細い道に入って行っちゃった。あのね、私がレクトを見たのは四歳くらいのことだから、記憶はあてにならないんだけど、でも、シンカに、少し似ていたの」

「シンカに?」
「うん。でも、人ごみで近づけるわけでもなかったし、怖くって。五、六人の、シンカが言っていたような仲間を連れていた」

ミンクはフォークで魚の残りをつつきまわしながら、言った。

「シンカ、小さい頃から、ずっとお父さんがほしかったんだ」
「ん?」
「シンカは、デイラでは特別だったの。姿が違うことも、ユンイラを必要としない体質も、そんなのすべて含めて、デイラの大人たちはみんなシンカのことを大切にしていたの」

「だから、聖帝からも隠していたのか」
ミンクは頷いた。

「いい意味で特別だったの。みんな、デイラの子供たちが、シンカのような姿で生まれてくることを願ってた。シンカ自身は、それをすごく嫌がっていたのね。そんなことより、普通にお父さんとお母さんがいることにあこがれていたの。デイラでは、そういう子供は、いなかったから」
シキは、遠い目をする少女を見つめた。

「私の家は、デイラの領主をしていたの。だから、よく、帝国の警備軍が交替になるたびに、家に招いてもてなしていたりしたの」

「そのたびにね、シンカはそっと見に来ていたの。あの時、遊んでくれたレクトが、軍服を着ていたから、だから、もしかして会えるんじゃないかって」

結局、あの、私と一緒に三人で遊んだのを最後に、レクトは現れなかった。
「そんなに慕っていたのか」

ミンクはうなずいた。
「シンカはね、大人になったらお父さんを探してあちこちを旅するんだって、いつも、そう言ってた」

探していた、父親が、父親かもしれない男が街を破壊した。
母親も、友達も、何もかもを失った。

シンカがどんな気持ちで、破壊されたデイラを見ていたのか。
想像したシキは、口に含んだ酒を苦く感じていた。



Line2

<162>
次へ[#] | 前へ[*]


目次へ
かんたん感想
自分の作品を本にする!


Footer1
▲ページトップヘ
ログイン
野いちごTOP[0]
Q&A
Footer2
Oshirase
(C)Starts Publishing
.