「深愛~The last tears~」
第1章
出会い
本邸、別邸の掃除を担当するようになって1週間。
広い廊下に膝を付き、さくらは冷たく感覚が無くなった指先を自分の息で温め、こすり合わせている。
雑巾を絞り、再び床掃除を始めた。
「こんなに寒いのに、お湯が使えないなんて最悪だよ」
同じく雑巾がけをしている萌が、さくらとすれ違う時にそう言って頬を膨らませた。
入ったばかりのさくら達は、別邸の清掃を任されるのだが
どんなに寒くても、お湯を使う事はできない。
使ってはいけないのではなく、使えないのだ。
「ちょっと、いつまでやってんのよ!ったくトロイんだから!!」
少し離れた場所で、いかにも意地悪そうな女にそう怒鳴られているのは弥生だった。
白女の中で最もタチが悪いと言われている女と同室の弥生は、不運としか言いようがない。
同時期に入った女がつい先日緑女に格上げした事がよほど悔しかったのか、こうして自分より立場が下の者を苛めてストレスを発散しているのだ。
その女の言いつけにより、さくら達新人はお湯を使う事が出来なかった。
しかし、下手に反抗すると面倒な事になると分かっているからか、みんな指先の痺れを我慢しながら掃除を続けている。
さくらは掃除をしながらも、ルリからもらった手紙の事や姉の事で頭がいっぱいだった。
結局何1つ手掛かりを得る事なく、時だけが過ぎていく日々。
姉に会うどころか、徳之條家の人間や、白女以上の女に会うこともほとんどない。
こんな事を続けていては、徳之條家に入った意味がなくなってしまう。
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