「蒼い星」
1.その男
5.この世界の現実
聖都シオン。
ラシア大陸の中ほどにある。
背後にそびえるジ・リユリ山の裾野にあたるその場所は、西に向かって低くなっており、東の果てに位置する城からは、とても眺めがいい。
暑い季節が過ぎ、北に落ちる夕日は、昨日よりさらに小さく見える。
市街には貴族の豪奢な邸宅や、商人の家、共同住宅のような広い屋根の家などがある。いずれの建物も、白い壁とオレンジの屋根に、夕日の赤を光らせて、美しく輝いている。
城の三階にある、小さいバルコニーのついた窓辺に、黒髪の男が立っている。
長い、腰までの髪をひとつに結わえ、黒い皮でできた動きやすい服を身につけている。
腰に差した短い剣は、軍人用のもので、軽くて丈夫、そして、何より血をたくさん吸っている。
シキは、くゆらせていた煙草の火を消し、身を翻した。
地下にいる、友人を助けに行くのだ。
ドアを開けると、ニ人の衛兵が、阻もうとしてきた。
シキの敵ではない。
地下で待っている友人が見たこともないくらい、今のシキの表情は恐ろしい。
先ほど、もう一人の友人、聖帝キナリスと決裂したばかりだった。
皇帝としての立場はわかってやらなくてはと、話し合いに臨んだものの、相手にはこちらの立場を考える余裕はないようだ。
昔、皇帝がまだ皇太子で、ちょうど、シンカと同じくらいの年だった頃、戦場で助けたことがある。
何の自信もなく、力も持ち合わせていない、それでも、できるだけの務めを果たそうとしていた。好感が持てた。
変わるものだ。
シキが軍の縛りを嫌い、自由な身になってからも、幾度となく国政を手伝ってほしいといわれた。
断りつづけた。
キナリスが嫌いだったわけではない。
この国のあり方そのものが嫌いなのだ。
ユンイラという植物は、人々を惑わせ、縛り上げている。
シキが生まれた国ダンドラも、同じだった。
隣のファシオン聖国からユンイラを買い取り、国民に与えている。
それを使って、人を操っている。
軍に入ってから、例の五年に一度ユンイラのしずくを飲むように指示された。
しかし、シキは決して飲まなかった。
それは、幼い頃に決めた自分なりのおきてだ。
民のためなど、偽善なのだ。
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