「蒼い星」
1.その男
4.この国の上に立つ者
ラツールをでて、次の町ランドロまでは、あっという間だった。
シキは三十五歳。聖帝国ファシオンの隣の国、工業国のダンドラの軍隊にいたらしい。
そこを辞めて、今は傭兵として、ファシオンの有事に備えているという。
「備えているって言ったってよ、何にも起こらなきゃ、仕事もない。たまには、誰かに恵んでもらいたくなるわけよ」
「だからって、強盗は向いてないと思うよ」
シンカは笑う。自称色男のシキは、馬鹿にするなといきがってみせる。
それを見て笑うミンク。
シキの存在は確実に二人の気持ちを軽くさせてくれた。
「なんだか、二人兄弟みたいよ」
そうミンクが言えば、
「こんなおっさん臭い兄貴、いらないよ」
とシンカが顔をしかめる。
「おっさんは違うだろ?お兄様と呼べよ」
シキがシンカに組み付けば、
「うるさいよ暑苦しい!」
シンカは蹴りで反撃する。
「あ、城門が見えた」
ミンクの声は明るい。
街道は右に大きく曲がっていて、枯れかけた並木がまばらに立っている。
乾燥しているのか、黄色い砂埃が、少しの風でも巻きあがる。
シンカは、並木の間、砂埃の向こうに小さく見える、土塀と木の扉を指差す。
日は傾きかけていた。
夕日が土色のランドロの城壁を照らす。
この季節は日が長い。
疲れを感じないまま、三人は五時間近く歩きつづけていた。
それほど、シキの話す遠い国の冒険談は、ものめずらしく面白かった。
デイラ以外を知らないミンクにとっては、なおさらだろう。
疲れているはずなのに、話の続きをせがんだ。
「寺院の町ランドロ、か」
シキが歩みを止めた。
長い黒髪が、夕方の涼しい風にゆれる。
「シキ?」
シンカも感じるものがあったようで、ミンクとつないでいた手を離し、ミンクをかばうように前に立った。
ランドロの町の城門には、ニ人の門番らしい男たちが立っている。
衣装は、すその長い地味な色のローブで、顔をフードで隠している。
寺院の僧なのだろうか。こちらを見ているようだ。
まだ、普通の会話くらいでは聞こえない距離だ。
並木が三人を隠している。
「ミンクを隠せ」
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