「水凪の国」
1.旅立ち

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村のはずれ、アクアは、デイスの家の前を通りかかった。

あいつらは学校のはずだ。

怒られることはできない意気地なしだからな。
親とか先生の前だといい子でいるんだ。
デイスの家はさほど大きくないが畑で野菜を作っていて、豚も飼っていた。

その庭には砂地に突き刺した鋳物の支柱に綱を渡しただけの簡単な柵がある。

そこに豚が放し飼いになっている。
数羽の鶏が紛れてえさをつつく。


気温が高くなってきたからだろう、豚も鶏も、柵の片隅に作られた日よけの布の下で、じっとしている。

早朝に作業は終えたのだろう人影も見えない。


母屋から離れた豚小屋の壁に干し肉用の豚の足が数本、きれいに干されている。

かなり食べごろだ。
アクアはそっと柵の綱の間をくぐり抜けて入り込む。

ローローが入ろうとするのをアクアが止めた。

「待ってろよ、お前のにおいに気づいて、鳥が騒いだらいけない」

キー。
少し不満そうだが、ローローは綱に前脚をのせて、立ち上がってこちらを見ている。


アクアはどきどきしながら、でも何気ない平気そうなふりをして、豚小屋のそばまで来た。

レンガの壁に背を向けて、もう一度辺りを見回す。

壁には豚が餌をもらうための四角い窓みたいなところがあって、今は麻の布がかけられている。

豚は外にいるから中は空のはずだ。

小屋の中を掃除する人の気配もない。

そっと、視線は周りを見たまま手を伸ばして肉をつかむ。

一本を引っ張ると、壁から突き出た釘に細い麻縄を渡して引っ掛けただけのそれは、他のも反動でゆらゆらゆれた。

強引に引き抜くと、偶然となりのも落ちた。

ラッキー。

それを拾おうと、かがんだときだった。


通りの向こうのローローの待つ柵のとこに、リョクの姿を見つけた。


こちらを見ている。

ぞわ、と緊張が背に走る。
なんで、来たんだ!
しかも、こんなタイミング悪いときに。

声かけるなよ!と顔をしかめる。


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