「水凪の国」
1.旅立ち

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村の中心には、役場と水守の詰め所、学校、教会。
市場とかがある。

レンガと砂を押し固めたごつごつした道を、荷馬車や市場に向かう大人が行きかう。

市場に向かう女の人たちはみな、白いフードを深く被り、頭にかごを乗せている。その日の食材を市場で買うのだ。
それが村の女性の朝の仕事。

男たちは仕事に向かう前に市場の屋台で朝食を済ませる。
学校へ向かう子供にもそういう奴がいて、アクアはいい匂いをさせる焼き鳥の屋台の前で、顔中をたれだらけにして頬張るデイスを見かけた。

さっと、荷馬車の陰に隠れて、通り過ぎる。

今は、目的があるんだ、バカに関わってる時間はない。


市場を抜けると、役場の三階建ての建物と水守の詰め所の漆喰の壁を両側に見ながら、道は緩やかな下り坂になる。

坂の途中の十字路でアクアは右に曲がる。
そこから階段でさらに下る。

降りたところから、左側には建物がなくて、学校の中庭が鋳物のフェンスの向こうに見える。

初等部の子供たちが走り回っている。

最後にあそこで遊んだの、いつだったか。



アクアは中等部に上がってからほとんど、学校に行っていなかった。

特にカタロが家にいない間は。

別に何が嫌って訳じゃないけど。
理由がない。

学校に行く理由が。


仲のいい友達がいるわけじゃないし、勉強したってしなくたって、同じだし。

だったら、苛められたり喧嘩したりするより、家で寝てたほうがいい。

それでもしつこく、アクアを学校に来させようとする先生の考えは、アクアには分からない。

先生だから、かな。

いつか聞いてみたかったけど、もういいかな。


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