「かえるのおうじさま」
2 カエルの事情
2-1 彼の名前は
――はあ。やっぱり駄目か。そう簡単にいくわけないよなあ。
残されたカエルは、ひとり、呆然と泉の側に佇んでいた。
泉の側には少女が置いていったバスケット。カエルは空腹に耐えかねて、バスケットに飛びついた。
中には小さなサンドイッチがぽつんと一つ。
――ええ!? これだけ?
そう驚きつつも、カエルはサンドイッチにその大きな口でかぶりついた。
一口だった。中に何が挟んでであるのかも分からないくらい一瞬でそれを飲み込んだ。
――なんという小食。
確かに彼女の外見を見る限り、そんなに食べるとは思えなかったけれど、それにしても少なすぎた。
カエルは彼女の外見を思い浮かべる。
金色に輝く長い髪は、ゆるやかなウエーブがかかっており、腰までの長さ。
瞳の色はアメジストのような紫色で、肌は白磁のようにつややかだ。
全体的に華奢で、夏物の衣の短い袖から覗くその腕は、かなりほっそりとしていた。
腰も恐ろしく細く、しかし、意外に出るべきところは出ていた。
彼女を初めて見かけたのは昨日のこと。最初はこのバスケットが狙いだった。
何しろこの数日まともに食べていないのだ。
カエルだからといって、皆が皆、虫を食べるかというと、そうでもなかった。
彼のような特殊なカエルはなおさらだ。
彼の名前はユーリ。
東国カストックの王子だった。
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