「水凪の国」
1.旅立ち
2
アクアも、明るい草色の瞳で睨み返した。
水のことは忘れていた。
それより、傍らに連れている女と、カタロがこれから家ですることと、そのために自分がしばらく追い出されることのほうが、アクアの怒りを沸き立たせていた。
どうせなら、帰ってこないで、町でやってくればいいじゃないか!
「水を、どうした?」
「なんで、そんなの連れて来るんだよ」
にらみ合う二人。
「やあねぇ、暑いから先に入るわよ」
女は、甘ったるい香油のにおいをぷんぷんさせながら、アクアの脇をすり抜けて、家に入った。
「あら、まあ!大変」
変な声を出した。
「なに?」
「なんだ!」
アクアと、カタロが入っていく。
狭い戸口を、争うように駆け込むと、アクアは立ち止っている女に突き当たった。
鼻を押さえる。
「ひどいわ、これ。半月分の水が台無しじゃない」
「お、まえ…」
女の声、カタロの声を聞きながら、アクアは女の脇から、顔を出した。
水がめの一つが、割れていた。
重くてひっくり返せないから、割ったのか。
部屋中、水浸しになったのだろう、土と水のいやなにおいがする。
目が慣れてくると、あちこちに、かめの破片が散らばっているのが見える。
ドン、と背中を突き飛ばされて、アクアは床に転がった。
「きさま!何をしでかしたんだ!え?水をこんなにしちまって!ばかやろう!」
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