「** 蒼い星 ** 2nd Story」
8.シンカ、潜る
その頃、金髪をくしゃりと乱れさせた皇帝は、前回と同様に仏心街に来ていた。
今日も一人きりだ。
一人で出かける時には、誰にも、もちろん、勘のいいユージンすら気付かれないように出てくる。
前回より時間が早いため、人通りもそこそこある。
代わりに囲まれること数回、それでもナイフを使わずにアドのジムまでたどり着いた。
閉まっている。灯りも消えている。
アドの家までの通りに行きつけの店があるらしいから、そこをのぞいてからいなかったら家に行こう。
そんなことを考えて、青年は歩き出す。
ドン。
小さな子供にぶつかった。
シンカの腰くらいまでの身長の彼を、とっさに捕まえて、支える。
黒い髪、白い肌、そのグリーンの瞳は少しアドに似ている。
「いってえな!おっさん。」
くすっと笑うシンカ。
「ごめん。」
おっさん、なんて言われたのは初めてだった。
いつも、大人に囲まれて、子ども扱いされてきた。
少し、嬉しい気分だ。
少年は小さな手をシンカの前に突き出した。
「慰謝料!」
「いくらだ?」
微笑んで話に乗ってみる。
「い、一フラン。」
「それじゃ、医者は診てくれないぞ。」
「え、じゃあ、十フラン。」
俺が子供の頃も、こんな感じだったかも。
精一杯、自分にとっての大金を口にする。
けれど、それは、大人から見れば可愛らしいものなんだな。
「笑ってないで、払えよ!」
「なんに使う?」
「バズが足痛いって言うから。・・そんなこと、あんたに関係ないだろ!」
「自分のためじゃないのか?」
「俺、元気だもん。」
少年の大きな瞳を見つめる。
その目は、生き生きしている。けっして、そらさない。
この街では、あまり見かけない。
いるんだな、こういう子も。
黒い髪をくしゃっとなでて、立ち上がると、少年に言った。
「俺がバズをみてやるよ。」
「なんだよ、医者かよ。それならそうと、早く言えよな。」
<37>
次へ[#]
|
前へ[*]
目次へ
かんたん感想
自分の作品を本にする!
▲ページトップヘ
ログイン
野いちごTOP[0]
Q&A
(C)Starts Publishing