「Security Abyss 3」
単調作業と興奮があいまって、桜沢の疲労感は麻痺していたが、それだっていつまでも続くわけではない。集中力の糸がプツリと切れ、桜沢は眠りに付いた。
桜沢が次に目覚めたのは、11時間後の夕方5時。けだるさに支配された頭は、しばらくの間、寝る前に己が何をしていたかを認識していなかった。徐々に思考能力を取り戻した頭は、体を即座にPCの前に向かわせた。小説は。ページビューは。
「一、十、百、千、万……?!」
ページビューは、そのカテゴリ内では既にランキング圏内の1万回台に乗っていた。桜沢はかつて流行に乗っかり、様々な他のケータイ小説を研究、時には剽窃し、そしてやっとこの程度の閲覧回数を稼いでいた。しかし、今回はそのいずれも行わず、ただの一晩でたやすく達してしまった。数日後には、あっという間にカテゴリ1位のPVになるであろう。桜沢は、ページビューに一喜一憂、自暴自棄に陥り、精神や肉体を病んだこともあった。それが、こんなに簡単に満たされる。あっけなさすら感じていた。
「……??」
桜沢は、あらためてランキングを見て、ページビューが実はランキングに直接関係無いのではないか、という疑念を抱き始めていた。数万でも10位台に居るものもあれば、数十万でも40位台に居るものもある。仮に、古いものが段々と落ちるようにランキングが設計されていたならば、急上昇株の自分の小説が上位にランクインしているはずである。
「……なんだこれ……」
ランクインしなければ意味は無い。昨晩のメッセージの主に、大いに馬鹿にされた気がして桜沢の苛立ちは急騰した。MMORPGを起動させ、昨晩と同じ場所へ向かう。
そこには、黒いコートを着たプレイヤーキャラクターが立っていた。
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