「Security Abyss 3」
盗人2
Line2

「>確かに目立つ格好だな」
「>この世界にはコートというものが存在しないのか?」
「>少なくとも俺が今まで見てきたプレイヤーキャラの中でコートを着た奴はお前だけだ」
「>そうか」

昨晩のメッセージの主は男だったようだ。もっとも、プレイヤーキャラクターとそれを操るものの性別の間につながりは何も無い。挨拶とは到底言いがたい刺々しいやり取りのあと、しばし両者は沈黙する。

桜沢は考える。何から聞いていくべきか。説明を要求したときにこいつはどう動くのか。理屈を想起しては潰し、想起しては潰しを繰り返していたとき、沈黙を破ったのは黒コートの男。


「>おおかた、ランキングが上がらない、というクレームでも付けにきたのではないか」

桜沢の頭に血が上る。やっぱり馬鹿にしていたのか。

「>わかっていたならなぜあんなもっともらしいウソを」
「>わかってはいなかった。私が出来ることはお前が理解している範囲の中のことに、少し付け足して世界の淵を大きくすることだけだ」
「>どうすればいい」
「>理解の範囲を広げればいい」

黒の男が言う"理解の範囲"とは何か、桜沢はすぐには把握できなかった。そして、そんなことは桜沢にとってどうでもよかった。もう一度、ケータイ小説サイトの利用規約、FAQ、Q&A、事務局のお知らせをくまなく精査する。

「読者数だ」

桜沢の使っているサイトでは、ページビュー数とは別に読者数もカウントされている。読者が小説を登録したことを示し、ページビューよりも確かな指標となる。これがランキングの計算に深く関わっているに違いない。

「>読者数だ、読者数を増やさないと意味がない」

桜沢は、諦め半分に発言した。

「>そうか」

黒の男が、再び長大なメッセージを送り出した。


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